コロナ禍において、テレワークを導入する企業が増えました。
この流れの中で、「テレワークがうまくいかない理由はメンバーシップ型のせいであり、成果を重視するジョブ型を導入すべき」という声があがったことから、マスコミでもジョブ型の重要性を謳うようになりました。
確かに、テレワークにおいてはコロナ以前よりも目に見えないシーンが多々あるために業務状況が掴めず、評価がしづらいというのは理解できます。
しかし、これは制度の問題ではなくコミュニケーションの問題ともいえます。かつ、メンバーシップ型であったとしても成果を見ずに評価はできません。「ジョブ型」「メンバーシップ型」といった雇用システムは、分類分けするための学術的概念でしかありません。仕事を通じて学び、コミュニケーションを通じて評価し、フィードバックによって育成することは一緒なのです。
つまり、テレワークか否かは、「メンバーシップ型は評価しづらい、ジョブ型が最高だ!」といった良し悪しの価値判断とは独立したものなのです。
また、「ジョブを明確化にするため、ジョブディスクリプションの作成に膨大な時間と手間を有する」といった記載も目にしますが、これも誤解です。
産業革命以来、欧米近代社会の企業組織は一貫してジョブ型でした。重工業が発展した1920年代の米国では、ブルーワーカーへの不利な条件提示や不当な解雇が横行したことから、「自身のできる業務を職務記述書として明文化し、それをもって労働契約を結ぶ」という雇用慣行が成立しました。これらは、20世紀初頭にフレデリック・テイラーが提唱した科学的管理法との親和性が高く、ホワイトカラーも含めて広く採用される雇用慣行となったものです。
しかし、変化の激しい昨今においては、ジョブディスクリプションはその意味をなさなくなりつつあり、個別タスクを明確に固めることはリスクもあるため、上位概念を記載する傾向が強いです。
(続きは、「本当のジョブ型とは企業戦略実現のための組織づくり」