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ジョブ型人事

人材マネジメント:ジョブ型vsメンバーシップ型(後編)

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山本 哲也 : 2022年 8月 15日

 前編では、日本企業の特徴であるヒト中心人材マネジメンについて解説しました。

 採用では、経営・事業・組織戦略を踏まえて長期的な視点で新卒一括採用。その上で、教育して配置、評価・報酬と育成を繰り返す。その結果社内で活躍する優秀な人材を育てていく。

 すなわち、所属する企業内で活躍できる人材への能力開発があります。しかし、ここには、社員のキャリア形成の意志よりも会社の経営戦略や人事戦略に左右され、社員が自ら専門性を高める、キャリア形成を考える仕組みが生まれにくい会社都合の人事戦略のあり方も垣間見えます。

 前編では、これらの遠因として、失われた20年に見られる低成長の日本の姿を指摘しました。

 後編では、ジョブ型での人材マネジメントについてメンバーシップ型との比較を交えて解説したいと思います。

 

 下の図は、ジョブ型人材マネジメントを簡単化して表したものです。一言でいうと職務をドンと真ん中に置いて、人事制度の施策・人財開発の仕組みのサイクルが出来ています。

 勿論、職務が先にあるのではなく、会社のミッションや目的、経営戦略や事業戦略に基づく組織体制があり、その組織の業務遂行に必要な職務を定義します。その上で、職務に必要な人財を内部登用や外部から調達します。そして、職務遂行に必要なスキル獲得のためにリスキリングやラーニングを実施していきます。

 

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 職務は、職務内容に加えて、期待される事、求められるスキルやコンピテンシーが職務記述書という形で整理されます。さらに職務に対する成果責任や待遇の基となるグレードが明確に定義されています。

 採用は、未経験のポテンシャル採用ではなく、職務遂行能力や人材要件に適合する人材をキャリア採用が中心となって行う事になります。日本企業の場合は新卒採用でポテンシャルを見極めて採用する事も同時に行われます。ただし、最近は専門職、エキスパートコースで待遇を変えて採用する企業も増えています。

 人材の配置も職務要件を満たす社員を内部登用も含めて実施します。さらに、社員のリテンションを図るためには、リスキリングやラーニング機会を提供して職務遂行に必要なスキル獲得を支援していきます。人事制度も職務に対して評価・処遇決定となり、職務に期待されることが出来る事が評価のポイントです。

 育成においては、ジョブ型だと社員任せという誤解もあるようですが、ジョブ型は経営戦略・事業戦略を担う組織があり、その為に必要な職務が定義されています。そのために管理者やラインマネージャーは部門の成果の最大化のために、社員育成に責任を持ちます。ここには、部下の目標設定や動機づけ、定期的な1on1ミーティングが求められます。

 他方、処遇に関してはメンバーシップ型と比べる厳しくなる事もあります。

 職務を基準とする評価結果で行うため、職務に期待される水準に達成しなければ、能力開発プログラムであるPIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プログラム)を実施することになります。日本の場合は労働基準法で厳しく制限されているので、能力に満たない社員を直ぐに解雇ということはできません。しかし、米国企業ではアップ・オア・アウト(Up or Out)という、「昇進するか、できなければ退職するか」という厳しいものが有るところも見られます。メンバーシップ型の場合は、配置転換などでうまく調整することが出来るので、成長に対する厳しさが緩い部分、日本企業社員の成長意欲を示すグロースマインドセットが低いのかもしれません。

 

日本の国際人材競争力は39位?

 

 以上のように、前編の日本企業に見られる「ヒトを中心とするマネジメント」と「ジョブ型人材マネジメント」の違いに関して図を交えて解説しました。ここで、どちらが優れていると論じるものではありませんが、ビジネスの世界では、競合企業と戦っていかなければなりません。そのためには企業のミッション遂行のために求められる職務を明確化した上で、社員にリスキリングやラーニングの機会を提供していくことで、企業価値の最大化、競争力の強化を図るために、人材マネジメントや人事制度のあり方を見直す時期にわが国は来ていると思われます。

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