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ジョブ型雇用

ジョブ型雇⽤の「誤解」について

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安田 雅彦 : 2022年 8月 4日

 昨今、議論の的となる「ジョブ型雇⽤」ですが、そのデメリットについて以下のよう語られ
ることがあります。
 ジョブ型雇⽤ではジョブディスクリプションで定められた「責任」が果たせなければ、すぐ
に「解雇」となってしまう。

 私は過去30年の⼈事キャリアのうち、20年を4社の外資系企業で過ごしました。それらの
企業は全ていわゆる「ジョブ型」でした。しかし、ジョブディスクリプションに記載された
責任が果たせてないからといって、いきなり「解雇(会社側が⼀⽅的に労働契約を解除する)」
ということはありませんでした。
 もちろん、実際に「責任」が果たせていないケースはあります。採⽤・⼊社したが期待通り
の実績が残せない。新しい職務・職位になったが求められる成果が果たせない。では、その
ような時にどうするか。


 まず上司はその部下に対し、期待と実際の働きぶりにギャップがあることについて、それを
証明する事実を持って伝える。そして、その部下の強みと伸びしろを明らかにすると共に、
どうしたらそのギャップが埋められるかを⼀緒に考える。また上司はそこでどんなサポー
トができるのかを提案する。そして次のチャレンジに向けての部下のコミットメント(誓約)
を得る。
 このプロセスを繰り返し、それでも求められる責任が果たせないと判断された時に初めて
「外に新しい機会を求めた⽅がいいのではないか」というアドバイスを含む提案をし、会社
からの何らかの⽀援(退職⾦の上積み・転職サポートなど)を⽰した上で、⼗分な話し合胃
による双⽅の合意を持って労働契約を解除する。いわゆる「合意解約」です。もちろん、い
きなりそうはせずに「降格」や「減給」という選択肢も持ちます。
 以上、多くの我が国におけるジョブ型企業(主として外資系)において、責任が果たせなか
った場合のプロセスのほとんどは上記のようなものであり、それは極めてフェアで誠実な
ものである(あるべき)と私は理解しています。上司は部下のエンゲージメントとパフォー
マンス向上に責任を持ち、そのために部下に対して真摯に向き合う。

 

 ⽇本で「ジョブ型雇⽤」を進める場合の障害として「解雇規制が厳格である」ことを挙げる
声がありますが、既に「合意解約」という⼿段が存在し、それを実⾏しているケースが事実
として存在していることを考えれば、解雇規制云々はあまり関係が無いように思います。そ
れよりもむしろ、「⽇本は解雇できない」ということを理由に「低業績」の社員に向き合わ
ず、寄り添わず、放置したまま「問題社員」に仕⽴て上げてしまう組織⽂化があるとしたら、
それこそが問題だと感じます。

 部下のパフォーマンスマネジメントとエンゲージメント向上こそが、上司の最⼤の責任で
ある。これを⾃覚し、部下に対して真摯に向き合う。これこそがジョブ型雇⽤を実現するた
めに必要なマネジメントの姿勢であり、その本質ではないでしょうか。

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